姉妹校 [ネパール]

2012年 訪問 レポート

2012年ネパール姉妹校訪問・研修旅行記
■◆■高等学校 教諭(国語科) 永島 裕子■◆■

ディリチョール村は、ネパールの西域、標高約2,500メートルの山村。

姉妹校訪問一団  そこにある生徒数800名の大規模校「リンモクシャ校」との交流も、今回で6回目となった。毎年、福中理事長を団長として文化交流が行われている。その姉妹校訪問一団のメンバーに、私は名乗り出た。「電気も水道もない。ゲストハウスは布団やベッドもない。シェラフ持参。村まで15km歩く。」若かりし頃、バックパッカーであった私には、胸をわくわくさせるものであった。
 メンバーは福中理事長(隊長と命名)、丹野先生(グレース保育園園長)、築地さん(画家)、宮崎さん(通称:山さん。おゆみ野四季の道を毎朝ランニングしながら清掃し世界一の遊歩道にすることを目指している)、椎名さん(理事長の小学校からの友人)、竹田君(築地さんが絵を教えにいっている特別養護学校の職員)、佐藤君(築地さんの教え子・元プロレスラーらしい)と永島裕子の8名。そこに通訳のネパール人ロビン君(八王子にある日本語学校に通う留学生)がカトマンズで加わり、9名でのネパール修行(?)となった。
バンコク市内のモノレールから乗り換え駅にて  バンコクからカトマンズに着いたのは、現地時間8月20日の午後12時30分であった。カトマンズでの空港税は200ルピー(約180円)。私にとって25年ぶりのカトマンズであるが、残念なことにほとんど記憶がない。憶えているのは、ポカラでのトレッキングとヒマラヤの山並みの美しさ。そしてお腹をこわしたことぐらいである。だから、25年前との比較ができない。情けないことだ。
 「空港では、荷物は他の人に持たせてはいけない。」これは、隊長の通達であった。アジアを旅したことのある私にとり当然のことであったが、同行の若者にはわからなかったらしい。
 荷物は全部で16個。メンバーの荷物に加え、学校に贈呈する天体望遠鏡、バザーで売るシューズ(卒業生が置いていった上履きや運動靴がリュック2つ)などなどである。隊長は、空港到着時と出発時には特に神経をつかっていた。私は、頭脳は駆使できないが、肉体労働では力を発揮できる自信があるのでこの時とばかり頑張った。通訳のロビン君が迎えに来てくれていた。ホテルまでワゴン車も用意されており、至れり尽せりである。
 車に荷物を載せようとしたとき、何食わぬ顔で荷物を持つ人がいた。ロビン君の知り合いかと思ったら、全くの赤の他人。チップ欲しさに近寄ってきたのだ。隊長が「NO! N0! 」と言っていたが荷物を離さない。私はすかさず「アイ アム ア ポーター。」と言いながら、その荷物を奪い取った。その時の隊長の笑い顔は今もはっきり覚えている。

てるてる坊主のご利益!ジュムラまで順調な飛行

 8月21日。ネパールガンジーに向けて8時35分飛行機は離陸した。

乗員乗客23名。日本で「ジュムラまで直行便がある。ネパールガンジーを経由はしなくていいかもしれない。」と聞いていたが、その情報とは違っていた。時たま飛行することもあるが、役人専用機のようだ。
 午前9時50分到着。雨が降ってきた。スコールだ。噂に聞いていた通り、ネパールガンジーは蒸し暑かった。隊長が日本から持参した団扇が暑さを和らげてくれた。団扇は、そのままネパールガンジーの空港のベンチに置いてきた。空港での荷物検査、ボディチェックは、ネパール時間のゆったりとした流れの中で行われた。いつ飛行機が飛ぶのやらわからない。一昨年はこのネパールガンジーで足止めされ目的地に行けず、昨年もここで2日間足止めされたという。毎年、同行している築地さんが一昨年のことを話してくださった。「毎朝ここに来て、このロビーで時間を送った。荷物を預け飛行機に乗る寸前まできて、飛べなかった。ネパールガンジーの街にはもう出たくない。」と。すべてが順調だった。午後12時15分、ネパールガンジーを離陸。
 飛行機に乗ると乗務員がキャンディーと綿を持ってまわってきた。綿が何のためかわからず手にしなかったが、気圧の関係から耳に入れるものだったことをあとで知った。頭が機内の天井についてしまうほどの小さな飛行機。これならば、天候で飛ばなくなるのも頷けた。空港税は200ルピー。
 天気が良かったので、ヒマラヤの山並みが見えることを期待し、隊長が先頭で乗り込み、そのあと私が続いた。隊長は右最後尾の席に。私は右最前列に座った。離陸してまもなく真っ白な景色が続く。初めは雲かと思っていたが、なんとヒマラヤの山並みであった。「すごい! 初めてだ! 」と築地さんの声が聞こえた。
 座席後方を見ると、隊長が嬉しそうな顔でカメラのシャッターをきっていた。着陸寸前まで美しい山並みが、私たちの目を釘付けにした。

ジュムラへ向かうイエティのプロペラ機
雨の中、ディリチョール村のゲストハウスへ到着

ジュムラに到着。パスポートナンバー、名前、年齢、生年月日、国籍を記入し搭乗手続きが終わった。
雲行きが怪しい。空港の周りは、軍隊や警察官がたくさんいる。空港の門には鉄条網が張り巡らされ物々しい雰囲気だった。
 荷物を6名のポーター(少年)とロバ2頭に依頼。隊長が持参したロープは、2つのリュックをロープで結び固定し、ポーターに背負わせるためであった。
 午後2時40分。昼食を済ませディリチョール村へ向けて出発。6kmほど歩いた村で休憩。チャイを飲む。小さな学校があった。残り9km。話に聞いていたより道は歩きやすかった。「このくらいの道でこのくらいの荷物なら走っていける。」と内心思った。しかし、標高が高い。高地トレーニングには最適だが・・・。
 ネパールの人は、ゴム草履でスタスタと歩く。雨期なので川の水が氾濫している箇所があった。運動靴は濡れてしまう。ゴム草履なら濡れても気にならない。靴を履いている人は少ないとは聞いていたが、ゴム草履の方が雨期には断然便利であると思った。ポーターの少年も、重たい荷物を背負い、15kmの道のりをゴム草履で何食わぬ顔で歩いていた。
 雨が降り出してきた。隊長と宮崎さん、その後ろに私と竹田君。少し遅れて椎名さん。さらに後ろには、ロビン君と佐藤君が丹野さんに付いて歩く。雨足が強くなってきた。途中、川が増水していて道がない。足元に注意して歩くが、もし暗かったらどうなったのか? 帰る日は大丈夫なのか? と不安がよぎった。
 雨足が強くなってきた。傘をさしポンチョを羽織って完全防備。持参したトレイル用のゲーターも役立った。
 谷間を挟みリンモクシャの学校の屋根が見えてきた。「もうすぐだ。」と隊長の声。「明るいうちに到着できる。」と思い元気が出てきた。が、なかなか到着しない。隊長がゲストハウスへ曲がる道を間違え後戻り。午後6時50分。30分のロスタイムはあったが、約4時間で第一陣は、無事に到着した。
 雨が更に激しくなってきた。ゲストハウスのトタン屋根を雨が激しく叩く。おそろしいくらいだった。暗くなってきたが、あとのメンバーが到着しない。隊長と私はライトを持って外に出た。そこにびしょ濡れの姿が見えた。安堵。
 気が付くと私と丹野さんの荷物がない。ポーターが依頼人(この村の地主の息子パダム・ポーター頭)の自宅に運んでしまったと言う。隊長は「ちゃんと仕事を終わらせないとポーター料は支払わない。」と言った。大雨の中、ポーターの少年はゴム草履で荷物を取りに行った。
 戻ってきたリュックはびしょ濡れ。私は、中の物はすべてビニールに入れておいたので無事であった。「備えあれば憂いなし」旅の経験が生かされた。
 この日の夜は、レトルト食品で済ませ、雨がトタンを叩く音を聞きながら寝袋にくるまって眠った。

ジュムラでの食事
山村に響く「千葉踊り」

リンモクシャの学校での授業は、日本語と書道。そして盆踊りを行った。
ネパール語と日本語の書かれたイラストを拡大し持参。山・川・星・太陽・月・・目・口・耳・母など。その漢字の成り立ちを説明(ロビン君が通訳)。そして、生徒たちは選んだ漢字を墨と筆で書く。筆20本、墨、半紙は日本から持参した。
 偶然というのだろうか。「身体を使った何かをしたい。」と考えて思いついた盆踊り。明徳高校の所在地である千葉県の「千葉踊り」を踊ろう。体育科の平山先生に曲の準備から、踊りも教えていただいた。リンモクシャ校の校長先生が「日本の踊りを教えられる人はいないか?」と聞いてきた。まるで話を合わせたように・・・。
 「選抜チームを作って、全校生徒が踊れるようにしたい。村の祭り。また来年、日本からやってきた人達に披露したい。」と。選抜チームへの希望者は30人。その中から10人を選ぶため、学校の中庭では「千葉踊り 選抜チームの審査」が始まった。30人を15人ずつ分けて踊る。
 審査委員は厳しい。校長と何人かの教員、ロビン君が話し合って10人が決まった。女子7人。男子3人。
 次の日は選抜チームの特訓。みんな真面目だ。「ヤッサホッサ ヤッサホッサ ヨイヨイヨイヤサ」の「サ」で手を叩くタイミングが難しいらしい。彼らが最初に覚えたのは「ヤッサホッサ ヤッサホッサ ヨイヨイヨイヤサ」と「イチ ニイ サン シ」であった。ゲストハウスに帰る私を見かけ、選抜チームでない生徒まで「ヤッサホッサ」と口ずさんでいた。来年この踊りが全校生徒で行われたら嬉しいものである。ネパールの西域のこの小さな村で「千葉踊り」。来年、確かめに行ってみたい気がする。
 書道の時間も踊りの時も、子ども達の目は真剣だった。好奇心に溢れていた。ロビン君によると「子ども達は、いろんなことを学び、知りたいと思っている。でも、教員がその欲求に答えることができない。だから、子ども達は欲求不満だよ。」と。

「千葉踊り」選抜メンバー決定
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ディリチョールムラまで15キロ
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