千葉明徳学園は2025年に100周年を迎えます 寄付のお願い

学園ニュース

学園ニュース 2024年1月号(280号)




【法人】


■◆■学校法人千葉明徳学園 理事長 福中 儀明■◆■

 令和6年・2024年が始まりました。理事長より新年のご挨拶を申し上げます。
■21世紀は1/4が経過
 21世紀の始まりのころ言われていたのは、これからの教育は国際化・情報化が大事ということでした。最新のPISAの結果は世界の上位を占めているので成果はあったと言えるでしょう。ただし、国際化は一方通行に終わっているのではないでしょうか。英語を勉強し、外国で活躍するという点では成果があったかもしれません。しかし、外国から日本に入ってくる人への教育は全く不十分です。
 特に千葉県は外国人の子供が多いとのことです。ほとんどは公立の小中学校に通っているけれど、日本語がよくわからない子も多く、苦労しているようです。その親たちは子供よりも日本語がわからず、さらに苦労が大きいことでしょう。
 一方通行ではない教育の国際化、これが必要です。そう思っているところにその機会が飛び込んできました。
■「イーグルアフガン明徳カレッジ」の開校
 私が知り合ったNPO法人「イーグルアフガン復興協会」(※1)の人たちとともに在日アフガン人の主婦のために日本語講座を開くことになりました。毎週土曜、40人以上の女性が短大に集まってきます。皆、熱心に勉強しています。母国ではタリバン政府の政策で学校に通わせてもらえなかったという人も多く、感動して泣きながら勉強しています。見ている私も感動しました。
 私はこの日本語講座を「イーグルアフガン明徳カレッジ」と命名しました。といっても学園は短大の教室を貸すだけ、復興協会がボランティアの日本語講師を募って運営しています。それでも明徳は復興協会からもアフガン女性からも感謝されています。
■明徳の建学の精神と共通するもの
 なぜ本学園でアフガン人向けの日本語教室を開いたのか、それは、千葉県は在日アフガン人が日本で最も多い県であり、特に四街道に多いからです。家族で住んでいて、男は働きに出るけれど、女(主婦)は外に出てはいけない、というイスラムの習慣を守っている、守らされている、でも日本語を勉強して外に出たいと望む主婦がたくさんいるのです。そこで、私は約100年前に明徳を創立した、その当時の創立者の建学の精神を思い出しました。女学校に入って勉強したい、けれど学校がない、という女子がたくさんいた時代です。千葉県がやらないなら私が作るほかはない、と考えて福中儀之助が学校を作った。これを思い出したのです。
■こどももたくさん
 毎週土曜、数十人のアフガン人主婦が車に乗り合わせ、あるいは電車で来ます。多くは子連れ、その子達の世話もしなければなりません。もっともこれは明徳の得意仕事で、明徳のこども園・保育園に声を掛けたら保育ボランティアがすぐ集まりました。小学生は私も加わって遊ばせます。算数・数学の勉強もさせたいと思っています。自主的に黒板で算数の勉強をする子もいます。
 親子ともに勉強熱心です。そこで気が付きました。途上国はみんな教育熱心です。底辺の生活(※2)から抜け出すためには教育が必要です、それをみんな知っているのです。知らないのは支配者のタリバンの男だけでしょう。
■途上国から学ぶもの
 私も途上国を旅行して、教育の熱心さを感じています。去年の年頭挨拶でも言ったことですが、インドの教育は日本を超えています。それを学ぶべきです。PISAでいい成績が出たからと油断してはいけない。あれは先進国クラブであるOECDの順位です。途上国を加えたら順位は下がるかもしれません。
■途上国に研修に行く
 途上国で学ぶことは、その教育の熱心さにあります。これを見てきていただきたい。そのための研修はすでに提案し、実施してきています。
 ネパールの姉妹校を訪問し、授業をすること――これは2007年から始めています。海外旅行未経験の教員が一人で途上国に行くこと(※3)――これは2018年から始めています。
 しかし、どちらもコロナ禍で2020年から止まっています。今年は復活させます。たくさん参加していただきたいと考えています。
■国内での研究・研修も必要
 JPGU(Japan Geoscience Union)日本惑星地球科学連合の総会が毎年5月末に一週間、幕張メッセで開催されます。延べ参加人数が8,000人を超える日本最大級の研究発表会です。私も毎年参加しています。高校生部門もあり、そのポスター発表は100件近くに上ります。私は各高校のポスターの前で説明してくれる生徒に質問し、評価することにしています。以前は千葉県の高校の発表はゼロに近く、これを憂慮して私が千葉県私学の総会で参加を呼びかけたところ、去年は市川学園が参加して3人の生徒が個人発表し、3人とも賞を取りました。立派です。市川学園の古賀 理事長に聞くと、地学の教員が3人いるとのことで、さすがスーパーサイエンスハイスクールです。
 理科の教員は全員がこのような学会発表に参加してもらいたいものです(参加費は学校が出します)。今年はおそらく能登半島地震の研究発表があるでしょうから理科教員でなくとも興味のある人は参加していただきたいです。
■優秀な生徒を育てるために
 優秀な生徒を育てるには教員が優秀でなくてはなりません。そのためには研究・研修が必要です。結構前のことですが、大学在学中の卒業生に次のようなことを言われたことがあります。
 「大学の先生は研究しています。でも高校の先生は研究していないでしょ。自分が大学で勉強したことを復習して授業にしているだけじゃないですか」
 厳しい指摘です。ほとんどその通りだと思います。私は反省し、当時最先端のプルームテクトニクス関係の本を一気に20冊ぐらい買って勉強したものです。それでも、その時は校長を務めていて授業をする機会が無く、残念でした。それだけにこの卒業生の生意気な、でも核心を突いた発言が心に残っているのです。
■100周年の現在地
 100周年記念の準備は始まっています。高校1号館のバリアフリー化改修は、北側小部屋の改修を含むことにしたため図面を書くのが遅れています。その前に図書館の改修がありますが、これもエレベーターの新設を入れたために設計変更があり遅れています。記念式典は、創立者を登場させて話をしてもらうという企画を考えています。ご期待ください。
■おわりに
  今年は教職員の研修をしっかりやりたいと考えています。費用は惜しみません。皆さんが意欲的に研究・研修をしていただけることを期待し、年頭のあいさつといたします。

(※1)イーグルアフガン復興協会(理事長 江藤セデカ)セデカさんは元アフガニスタン政府職員。日本人と結婚し、日本国籍取得。アフガニスタンへの支援と在日アフガン人の支援活動に尽力している。参考HP https://webafghan.jp/ea_afghan_meitoku/
(※2)アフガニスタンの一人当たり国民総所得 500ドル(アジア最下位)、合計特殊出生率 4.2(アジア最多)、識字率 男56%、女30%(アジア最下位)
(※3)中高教員の海外旅行未経験者対象。学校が旅行費用として20万円を支給。一人で途上国に行くことが条件。過去に、①パラオの日本軍玉砕の島ペリリュー島へ②サンディエゴからトランプ大統領が作った壁をくぐってメキシコへ③タイの北部、麻薬のゴールデントライアングルへ④クロアチアのユーゴからの独立戦争の跡をたどる 等に行ってきた例がある。



【短大】

■◆■千葉明徳短期大学 学長 由田 新■◆■

 昨年5月に新型コロナウイルスが5類扱いとなり、様々なことが大幅に緩和されました。おかげさまで、授業は以前と同様に行うことができました。そして、実習も以前のように実施することができました。状況は随分と変わりました。フィールドワーク、授業での学外学習の機会も増やすことができました。学園祭も完全復活し、サークル活動も動き出しました。そして中庭において自分たちで火を起こし、バーベキューを楽しむ姿も戻ってきました。喜ばしいことです。
 新しい試みとして、コロナ禍の中で高校3年間を過ごしてきた新入生に対して、明徳の学びへスムーズに入ってこれるように、オリエンテーションウィークを設けるなどの工夫を行いました。
 コロナ禍を通して、オンラインの授業環境も手に入り、結果的に学びのためのツールは増えました。短大は、今年度入学生からパソコンまたはキーボード付きのタブレットを持つことを必須としました。学内のICT環境も整い、さまざまな学び方が可能となり、私たち教職員の活かし方が大切になってきています。
 一方、学内に活気が出てきたこととは裏腹に、本学は厳しい状況に置かれています。18歳人口の減少、保育希望者の激減にともない、入学者数は減少しています。保育現場からの求人は相変わらず多く、人手不足であることに変わりはありません。それにもかかわらず、なり手が減っているということです。保育職は低賃金でその大変さに見合わない仕事というマイナスのイメージがマスコミやSNSを通して語られます。これは本学だけの問題ではなく、保育業界、日本の子どもの将来とも関係する大きな課題です。保育の危機といってもいいでしょう。保育職は楽しさややりがいのたくさんある仕事であることを世の中に向けて、高校生に向けてこれまで以上に発信していきたいと思います。
 本学は、独自で本質的なカリキュラムを持つ養成校だと自負しています。逆風に負けず、小さい学校の良さをいかして生き残り、地域に力のある保育者を輩出していきたいと思います。皆様の変わらぬご支援をどうぞよろしくお願いいたします。



【中学校・高等学校】

■◆■千葉明徳中学校・高等学校 校長 宮下 和彦■◆■

 新年、明けましておめでとうございます。今年も新たな希望をもっての幕開けとなりました。コロナは収束しつつあるようですが、世界情勢や生成AIの進化等、不安な要素は尽きません。そうした中でも教育の力で未来を切り開き、前向きに進んでいきたいと思っています。
 さて千葉明徳中学校・高等学校は、これまでも積極的な学校改革に取り組んできています。進学校化やICT化、探究活動を推し進めてきました。おかげさまで、生徒たちや教職員の努力も実って、少しずつではありますが、かたちあるものになりつつあります。今年はその延長線上で、さらに発展・充実をさせていきたいと思っています。もちろん教育の中身を深めていくとともに、施設・設備面での充実も欠かせないことです。目に見えるかたちとして改革を進め、コンピューターと共存する社会で、人間力の充実を図っていきたいと思っています。
 今まさに、時代は私学教育が求められています。画一化された学力の向上ではなく、それぞれの学校独自のカリキュラムにより、どのような人間を育てていくかを明確に示していく必要があります。そして、それに則った教育を実現しなければなりません。千葉明徳中学校・高等学校が育てたい人間像は、「明徳を明らかにする人間」、「行動する哲人」です。自らの道を切り開き、地域や社会に積極的に働きかけていく実践者を育てたいと思っています。特に、今まさに実践している総合学習や総合探究では、自らの方向性を見据えて、しっかりした学力と探究心を身につけていくための取り組みを行っています。
 このような千葉明徳の教育実践が広く世間で認められるようになり、地域社会でその中身が浸透して受け入れられていけば、新たな価値を創出していけると信じています。本校の生徒や卒業生が「行動する哲人」として活躍し、それぞれの場で「明徳を明らかにする」 ことが実現されることを強く願っています。 今年もぜひ、千葉明徳中学校・高等学校の教育を見守っていただき、ご支援ご協力を賜れば幸いに思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

 
【幼稚園】

■◆■千葉明徳短期大学附属幼稚園 園長 明石 現■◆■

 明けましておめでとうございます。
 今年の元日は、能登半島地震による大災害のニュースが日本中を驚かせました。災害はいつやって来るのか分かりませんが、厳冬の日本海側で起きたことが事態を一層深刻なものにしていることと思います。本学園の皆様のご家族、ご親戚にも被災されている方がいらっしゃることと存じます。ここに、心よりお見舞い申し上げます。
 さて、年が明け、令和6年となりました。皆様、年初にあたり本年がどのような年になるのか、期待に胸を膨らませていらっしゃることと思います。
 附属幼稚園では、本園の恵まれた環境や職員のもっている力を集約させ、それを余すことなく子どもたちに手渡すべく、昨年9月に「園庭推進チーム」「芸術推進チーム」を立ち上げました。
 緑豊かな本学園には、150種類を超える樹木があります。それらは季節ごとに様々な表情を見せ、子どもたちはその変化を体感しながら園生活を送っています。落ち葉、木の実や果実に実際に触れてみることでその不思議さに興味をもち、それについて自分たちで調べたり、保育者に聞いたりしながら、その奥深さを知ることの楽しさを、まさに自然と受けとっています。
 自然の中で過ごすことは、身体的能力の向上や心の落ち着きを促すだけでなく、多様な色彩、音、質感に触れる機会となり、それが新たな探求心を引き出し、それがやがて本来誰もがもっているであろう、美しいものへの憧れとでも言える豊かな感性を育むことにつながります。また、環境問題への意識の醸成というような大仰な話ではなく、木々が子どもたちに穏やかな心持ちになれる静かな場所があることを、やさしく教え諭してくれているとも思います。
 一方で、芸術という、掴みどころのない不思議な存在に、幼少期のうちに触れることの意味は多様であり、見る角度によってその効果は様々でしょう。単に好き嫌いという二極では推し量ることのできない人間の複雑な感情、好きなのか嫌いなのか自分でも分からないような曖昧な心の状態をもっとも的確に表現できることは、ある意味で芸術特有の領域と言えるのかもしれません。大人のように、言葉による自己表現が難しい子どもたちであれば尚更です。もちろん、子どもの言葉の裏側にある心情を保育者が読み取ることの大切さもありますが、ある子どもは色彩で、ある子どもは歌声や音で、ある子どもは身体で、その繊細な心の状態を、言葉に代わって表現していることもあると思います。また、一般的な理解としての「子どもの情景」にはない芸術に触れることによって、本人も周囲の大人も想像できないような、大きな変化、進歩をもたらすこともあるでしょう。都市化やデジタルデバイスの普及が急激に進む現代社会において、これらの働きかけは特に重要な側面をもつと考えています。



【本八幡】

■◆■明徳本八幡駅保育園 園長 戸村 大和■◆■

 新年あけましておめでとうございます。定員変更を行い、3歳以上の子どもたちがいる今までにない新鮮な年明けになりました。子どもたちも、お休みの間に、「○○に行った」「△△食べた」など年末年始のお休みの間での出来事を具体的に嬉しそうに報告してくれました。そんな中、「グラグラってなって、体育館に逃げたの」と話す子がおり、『???』が浮かびましたが、よく話を聞くと祖父母宅へ帰省している際に能登地震に遭い、小学校へ避難したことを教えてくれました。保護者の方からは、少し怖がりながらも、慌てずに冷静に避難した様子を見て、保育園で毎月行っている避難訓練での経験が、こんな日に、こんな所で我が子の成長として見られるとは思っていなかったとおっしゃっていました。
 私たち保育者自身も、再度今回の地震を踏まえて保育園の安全を再確認し、“いざ!!”という際に慌てず冷静に対応していきたいと再認識することが出来ました。
 明徳本八幡駅保育園は設立してから、2023年10月で20周年を迎えました。人に置き換えると、成人式を迎える年齢です。コロナ渦で途切れていた地域との交流を少しずつ活性化させていきながら、地域に、社会に貢献できる保育園を目指していき、2024年は子どもたちと共に沢山の学びのある1年にしていきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。



【浜野】

■◆■明徳浜野駅保育園 園長 海邉 成美■◆■

 新年、明けましておめでとうございます。
 本園には、お子さんの成長を20歳までおいかけよう!という開園当初からの思いによる、卒・退園児を対象とした「めいとく20年プロジェクト」があります。今年度は、その主な行事の「めいとくのつどい」を4年振りに開催することができました。
 当日は園内に100名以上の子ども達と保護者が集まり、開園以来14年間その日の保育内容を写真入りで綴っている「今日の出来事」を見返したり、久しぶりに会う友達やママ友との再会を喜んだり、園内のあちこちで懐かしい話に花を咲かせていました。
 この日、とても印象的だったことは、「子ども達は部活で来られないけれど、私だけ来ちゃいました!」という保護者が数名いたことです。思い出のある保育園に自分だけでも行きたいと思い足を運んでくださったことに感謝すると共に、私達が目指している《大きな実家》的な存在にまた一歩近づけたと感じた瞬間でした。
 そして、この日をきっかけに、参加者の近況をたくさん伺うことができ、進級・進学への相談や、それ以外の趣味の話などで再度繋がりを深めることができました。今後も、お子さんの将来や保護者の悩みに寄り添って切れ目のない支援ができるように連絡を取り合いながら、近況の把握をしていきたいと考えています。
 また、千葉県第三者評価の受審も経験しました。保護者アンケートの結果が大変満足73%・満足27% 合計100%と大変高い評価をいただき、ここでも本園が保護者のみなさんにとって安心できる場所になっているのではないかと考察されます。今まで真摯に保育に努めてきた成果に、職員一同ほっと胸を撫でおろすと共に、次への意欲に繋がっています。
 そして、私事ではありますが、2024年に節目の歳を迎えます。さらに参加者が増えていく「めいとくのつどい」を今後も開催し、本園にかかわるたくさんの方と日々接しながら、初心に戻って保育に努めてまいります。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 


【やちまた】

■◆■明徳やちまたこども園 園長 丹野 禧子■◆■

 皆様、明けましておめでとうございます。
 旧年中の御厚情と力強いご支援をありがとうございました。今年も学園と明徳やちまたこども園の益々の発展を祈念しながら園の経営にあたっていきます。本年も明徳やちまたこども園をよろしくお願いいたします。
 さて年明けて今年は「辰年」。60年に一度の「甲辰」で、特に成功が期待される縁起の良い年と言われています。計画していたことやそれぞれの思いが現実になってくれると嬉しいなと思っています。
 4月1日になると、やちまたこども園は創立10年目を迎えます。縁あって園長になった平成29年7月から、色々あってこの日を迎えます。0歳児1名で全園児64名、定員は75名ですので定員に満たず、支出超過の施設でした。「今年は無理でも来年は定員を満たし、その次の年には収入超過にする」と心に誓いました。「役所に土下座してでも子どもを回してもらう」と役所に行くたびに「また来たか・・・」という顔をされても、係の人に声をかけました。「定員数に合わせて職員を採っているんです。子どもを回してくださらないとうちはつぶれます!」。3年目にやっと目標通り収入超過とすることができました。
 園長として就任してからの3年間にも職員の大量引き抜きや、就任前からあった保護者との軋轢がエスカレートし毎日毎日が苦しいものでした。
 また、この園は前身が50年以上の歴史を持つ園であったため「明徳やちまたこども園」の名称をはじめ、目指す保育方針を地域の方々に認識してもらうことが大変でした。保育者の養成を担っている学園の系列園としては、幼児教育の本道から外れた保育はできません。授業で学生に教える保育の本質と実際の保育者の保育の姿に齟齬があってはならないからです。子ども一人ひとりが主体で、自ら「やってみたいな」「試してみたいな」と思うことに取り組めて、その時間を保障していくことを大切にする保育です。それはごく日常的で当たり前の子どもの生活が園にあるということです。
 今まで色々な保育者がやって来て去っていきましたが、職員はそれぞれ日常の自然の流れの中で、子ども一人ひとりの「良さ」を見つけながら一緒に生活しています。どちらかというと穏やかに静かなタイプが多い保育者集団ですが、子どもを心いっぱい可愛がり、おもしろがり、保護者と共に子ども一人ひとりに暖かい眼差しを日々投げかけている保育が明徳やちまたこども園の宝です。
 昨年度は学園系列園の園長会企画の層別研修も2年目を迎えました。令和6年度は3年目を迎えます。「鉄は熱いうちに打て」の通り保育の資質向上に向けて、初任研、中堅研、主任研と内容をそれぞれ充実させながら「明徳を明らかにする」学園の教育理念を根底に、「自ら学ぶ」ことと明徳の幼児教育の中に自らの帰属意識と共にお互いに育ち合う心」を育てていって欲しいと願っています。それぞれの部門へ各系列園から2名程度の参加で、主任研は土気の北村先生、中堅研は土気の夏井先生、初任研はやちまたの花井先生と、現場の先輩としてファシリテーターをしていただいています。一年に4~6回の研修会ですが、約2時間しっかりと自らの課題を見つめ、整理しながら実践を通して研究を進めています。各園それぞれの事情はありますが、研究の時間の保障は園長としての責務であると思うのです。自らの課題に向き合いながら、日々の実践の質を高めていく姿勢を、それぞれが互いに影響し合いながら進めていく、その一歩が各々の保育の資質向上へ向かっていくことを考えると、参加する人々のこれから先が楽しみです。
 そして最後にまた、今年も言っていると思われそうですが、やちまたこども園を建て替えたい。自分達が取り組んでいる保育の具現化としての新園舎を、最長13時間この空間で過ごす子ども達が健やかに生活する居場所を保障したいと思うのです。やちまた幼稚園時代から40年以上使われていた木製大型遊具も一足先に(現代の安全基準に合っていないのと県監査からの指導もあり)創立10年目の記念品として古い物を撤去・新設することとなりました。子ども達が笑顔で遊具に取り組んで遊ぶ姿を思い浮かべ、今からとても楽しみです。
 少しずつ新しい未来に向かって歩き出して行ける一年であるよう、これからも皆々様のご指導とご支援をよろしくお願いいたします。
 夢は軽やかに空を翔け回れ!「甲辰」を!!

 




【土気】

■◆■明徳土気こども園 園長 龍 孝幸■◆■

 昨年、保育施設での園児に対する虐待や置き去りの報道が相次ぎました。
 永くこの仕事に携わってきた人間として、やり切れない思いと何故そのようなことが起きるのか、私なりに整理してみました。どんな保育者もこの道を志した時、将来子どもにひどい事をしようと思う人はいないはずです。ですが、いざ保育の仕事についてみると、思った以上に心の寛容さと体力、知識とスキル、チームワークと、自分の力をフル稼働することを求められます。何故なら、小さくても一人ひとり意思持った人間を相手にしているのが、保育の営みだからです。小さいが故表現が稚拙で、泣く、言ってもワカラナイ!じっとしていない等、大人を困らせると思える行動をとるのが子どもです。
 例えば、給食時間に泣き止まない食べない子がいたとします。1歳児の保育室で珍しい光景ではありません。1人でその子以外の5人の子の食事を食べさせる必要があり(まだ誤飲の可能性もある年齢で目は離せません)食べさせる以外にも汁を溢せば着替えさせ、床を拭く、先に食べ終わった子もいる。この状況の中1人の食べない子にだけ関わっている訳にはいきません。何時までも泣いて食べない子がいたら「早く泣き止ませなければ困る」「わがままを言っていないで泣き止んで」との思いから感情的な対応に傾く(それを躾といってしまう)当然その子は、保育者を困らせる子・困った子となります。
 そんな時それぞれの現場で、子どもへの人権意識をきちんと持って臨み、子どもは意思を持った一人の人間であるとして保育に当たっていれば、このようなことにはなりません。食べない泣き止まない行動を、その子の気持ちの表現・意思として、何を訴えて泣いているのか読みとろうと聴こうとすると、「その前まで乗っていたコンビカーにもっと乗っていたかったの」「エプロンを自分で持って来たかったの」と聞いたり想像したりと、年齢の発達段階を鑑みて理由が判り子どもも納得し先が見えてきます。その場合同僚が、その保育者の行動に意味があることを、共有しているかが鍵です。チームで助け合える関係があり、何より園として子どもの人権を大事にすることを基本にして、保育を組み立てるかが問われます。
 しかしながら、保育の於かれた社会的背景を見ると、幼い命に係わる仕事であるにも関わらず、待遇に見られる社会的評価の低さ、国の定めた配置基準は1歳児6:1です。加えて長時間保育(保育標準時間の子どもは11時間、職員の勤務時間より長く子どもがいる状況)もあり、記録や保育準備・環境整備(コロナ禍での消毒これまで以上に)の時間はどこにあるのでしょうか。これでは質の向上の為の研修に出せない園があるのも納得できます。更に地域への子育て支援・保護者支援と現場に求められることは多くなり、現場は疲弊している状況です。
 国は保育の質の向上を謳いながら、実際の施策は真逆の待機児対策を優先して量を増やし、質の担保できない保育現場を増やした結果ともいえるでしょう。保育士として高潔な志を持って仕事に就いたけれど、疲弊してこの職を離れて行った保育者が多いことは、深刻な保育士不足が物語っていると想像するところです。
 日本のフレーベルとリスペクトされている倉橋惣三は、その著書「育ての心」の中で「人間を人間へ教育しつつあるということは、我等の一日一刻も忘れてはならないことである」と教えています。子ども家庭庁が新しく創設されると聞きました。どの保育現場も、倉橋の教えを実践し、子どもの人権を守れる環境となることを訴えなければと思う今です。

 




【そでにの】

■◆■明徳そでにの保育園 園長 大塚 朋子■◆■

 明徳そでにの保育園は、習志野市の公設民営化に伴い平成25年度からスタートし、今年で12年目を迎えます。
 公立からの引き継ぎを受けたことで地域との交流もそのまま継続することとなりました。近隣のこども園、小学校、中学校、子育てセンター、地域の老人会、ボランティアの訪問等です。
また習志野市は地域の皆さんの結束力が強く、各地区にある街作り会議では、地域にある施設関係の長が必ず出席し施設状況を伝えています。地域が一体となり子どもや老人が住みやすい街作りを進めています。
令和2年に新型コロナウイルスが大流行し、学校の休校や家庭保育の協力など外出が制限され、地域との交流も全く出来なくなりました。令和5年にようやく4年ぶりに地域交流が再開され、コロナ禍前の状況に戻りました。年長は地域の小学校や子ども園、相撲部屋(阿部松部屋)に出かけ交流しました。小学校との交流では、1年生が用意した手作り遊具を各コーナーに分かれて一緒に楽しみました。刺激を受けた子どもたちは、次の日からクラス内で廃材等を利用して手作り遊具を友だちと協力して作り、自ら主体的な活動へと発展させ、暫くその遊びを継続していました。
また、同年齢の子ども園児との交流では、クラス対抗のリレー等を行い、1月下旬にはドッヂボール対決をする予定です。リレーでは、勝利という目標に向かって2チームに分かれて練習を繰り返し、子どもたちで勝つための作戦会議(走る順番決めや負けた原因等をさぐる)を何度もしました。当日は、そでにの1チームと子ども園2チームの3チームを2つに分けて2レースの勝負をしました。2レースとも約半周から1周近く差をつけての圧勝となり、子どもたちの自信に満ち達成感に包まれた表情に、応援していた子どもたちや職員は大きな拍手を送りました。
また3歳の頃から遊んでいた相撲ごっこでしたが、ようやく年長になって相撲部屋に出かけての交流が実現しました。クラスに力士のしこ名入りの写真や番付を貼ったり、(相撲)取組のビデオを見たりして、相撲を身近に感じるような環境を用意すると、さっそく子どもたちで軍配を手作りしたり、対戦表を作って子どもたち同士で対戦したり、優勝者へ子ども達が考えた横綱のしこ名を付け、三役のしこ名などをクラスに貼ったり、相撲ごっこを連日のように楽しみ、交流を待ち望んでいました。当日は、力士の気迫あるぶつかり合い稽古を見て、子どもが軍配を持って行事を務め、次々に力士と対戦させてもらいました。子どもたちの熱い眼差しはもちろんですが、私たち引率の大人も初めて見る本物の力士の姿に感慨もひとしおでした。次の日からの相撲ごっこは、年下児にも影響を与え、相撲部屋で見た土俵ならし(竹ぼうきで土をきれいにする役)をする子どももいて、経験をすぐに取り入れる子どもの感性は素晴らしいと思わず微笑んでしまいました。子どもたちがいろいろな環境に出会い新しい発見をし、自ら学ぶ姿勢や成長する姿に、私たち大人は大きな感銘を受けます。4年ぶりの地域交流から、改めて地域との連携の大切さや子どもが様々な人と繋がる力、豊かな心が育まれていることを実感しました。
 今年も子どもたちの更なる成長を願って……。どうぞよろしくお願いします。




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