樹木NEWS-306:冬の自然観察会(保育者)

お知らせ

樹木NEWS-306:冬の自然観察会(保育者)

2024・1・10

明徳幼稚園の教職員を対象に、冬の自然観察会を園内研修の一部として開催しました。

(12月下旬に開催しました)

 


このページは、養成校の附属幼稚園として、幼稚園や保育園等の保育者の方が見て参考になるように記事をまとめています。

自園で子どもと自然とかかわる方法のヒントにしていただければ幸いです。


 

 

 

12月下旬は、落葉樹の葉っぱが全て落ち、自然の地肌と樹木の息吹を目にすることができる面白い時期です。

 

 

今回の自然観察会では、

レイチェル・カーソン著「センス・オブ・ワンダー」に記載のある言葉

 

①「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」

②「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない

③子どもといっしょに自然を探検するということは…あなた自身の感受性にみがきをかけるということ

 

 

を確認し、保育者自身が「感じること」「感受性にみがきをかけること」の重要性を意識しながら、次の3つのポイントにも気にかけて参加してもらいました。


①たくさん触って、自然を感じてください

②擬音語で表現してみてください

ざらざら、ぼこぼこ、ごつごつ、つやつや

さらさら、てかてか、つるつる、ぎざぎざ

「きらきら しているね、これはどう?」など

③お土産を1つは見つけてきてください


(このポイントは、親子向けの自然探検会で保護者の方に伝えたポイントと同じです)

 

 

 

 

 

この自然観察会を通して考えてほしいことに、

幼稚園教育要領などに記載されている幼児期の終わりまでに育ってほしい姿「自然との関わり・生命尊重」を提示しています。


自然との関わり・生命尊重」

自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心 が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。


どのような保育・かかわりを重ねていけば「畏敬の念をもつようになる」のでしょうか?

保育者がしっかりと考え実践しなければならない事柄だと思っています。

 

 

 

 

 

今回の観察会では、

「自然に触れて感動する体験を通して」という10の姿の文字の通り、教職員には心動くような感動を体験できるような内容で開催しました。

 

 

 

 

その一部をお伝えします。

 

【モミジバスズカケノキ】

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この木に、いくつのタネがあると思いますか?

ぶらさがっているのは、、、500個?1000個?

 

いえいえ違います。

モミジバスズカケノキのタネは、集合果。

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ぶらさがっている1つ1つに、約500個ほどのタネがくっついています。

 

 

っということは、、、。

 

この木には、25万個~50万個のタネがあるんですよ!

雄大ですね。

 

<<何でこんなにたくさんのタネができるのかな?考えてみよう>>

 

 

 

 

 

 

 

【樹木表示や図鑑】

子どもたちに木の名前を覚えてもらう必要はありません。小学校や中学校に行っても木の名前を覚える授業はありません。

その様な中でも私が明徳幼稚園で樹木に樹木表示をつけているのは、子どもたちに「木にも名前があること」「同じように見える木も、違う種類であること」「同じ種類でも育ち方が違うこと」などに、樹木表示を通して気づいてもらいたいと考えているからです。

また、あえて全ての樹種に表示をつけていません。

これは、表示を見比べて「これも同じ木」と気づいてほしい思いからです。

どんな図鑑にでも載っているような木にも表示をつけていないか、表示の数を減らしています。

 

「探求心の入口」として、 図鑑で調べてること → 発見する喜び、調べて分かる面白さがあると思っています。またその経験から、学びに向かう力が育つと良いなと考えています。

図鑑で調べて載っていないと⤵ がっかりしてしまいますよね。探求心もそこで終わってしまいます。

そんな保育の仕方で良いのでしょうか?

 

明徳幼稚園では、明徳幼稚園(明徳学園)に植栽している樹木だけの図鑑を作っています。調べたら必ず分かる図鑑です。

また、樹木を市販の図鑑での調べられるように調べやすい図鑑「林将之著:見る知る考えるずかん 五感で調べる木の葉っぱずかん」も用意しています。

 

 

 

 

 

 

 

【サザンカ】

サザンカは、日本固有種です。

固有種と在来種の違い、知っていますか?

 

さて、サザンカとよく似ている花にツバキがあります。

サザンカの花びらは、1枚ずつ散ります。

ツバキは、花ごと落ちます。

 

この花の散り方の情景を伝える日本語の美しさを感じとることができます。

・ツバキは、落ちる。

・サクラは、散る。

・ウメは、こぼれる。

・アサガオは、しぼむ。

・ボタンは、くずれる。

・ユキヤナギは、吹雪く

・アジサイは、しがみつく。

日本語の奥深さだなぁと感動します。

 

<<他の花の散り方は?考えてみよう>>

 

 

 

 

 

 

 

【トウネズミモチ】

みなさんは、お子様にどんな思いをもって名前をつけましたか?

生まれてきて顔をみて、名前を決めた方もいらっしゃるのではないでしょうか?


と、名前の由来の前置きをした上で、ここで、トウネズミモチの名前の由来を見てみましょう。

 

・トウは、中国原産だから

・ネズミは、実がネズミのフンに似ているから

・モチは、葉っぱがモチノキに似ているから

 

 

 

・・・ぜんぜん、トウネズミモチ本体由来の名前がありませんよね。

 

<<知っている木の名前の由来を調べてみまよう>>

 

トウネズミモチは、生態系被害防止外来種の重点対策外来種リストに指定されています。日本在来種のネズミモチと競合してしまうんですよね。

「SDGs15陸の豊かさを守ろう」においても、生物多様性を防ぐための措置を講ずることも目標に含めています。

 

 

 

 

 

 

 

【アカメガシワ】

ここにあるアカメガシワは、

(2024年1月撮影)

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2019年4月にはありませんでした。

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アカメガシワは、先駆植物とも呼ばれるほど、荒地の隙間に落ちた種子からも芽を出し成長の早い植物です。

築山のほんの少しのくぼ地にタネが入って育ったのでしょう。

気付いた時には、子どもがぶらさがって遊べるようになっていました。

 

荒廃して土に栄養がなくても、どんどん育ち、あたりに木陰を作り、冬には葉を落として微生物を介して土を豊かにしていく先駆植物。

森の開拓者でもありますね。

 

 

そんなアカメガシワのアカメの由来は、

・新芽が赤いから。

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しっかり、この樹木を見て名付けてもらえたんですね。

 

<<森って、どうやってできていったのかな?>>

 

 

 

 

 

 

 

【オニグルミ】

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こんなところに顔が?

これは、葉っぱが落ちた跡です。

頭の部分は、春に葉になるところです。

 

これはカキノキ。

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<<他にも顔にみえる枝を探してみよう>>

 

 

冬芽探しには「ふゆめのがっしょうだん」と「冬芽ハンドブック」がお勧めです。

Wbook

 

「野鳥と木の実ハンドブック」には、木の実を食した著者の感想が載っていますので、こちらもお勧めです。

 

 

 

 

 

 

 

【木の名前の調べ方】

最後に、図鑑を使っての木の名前の調べ方をお知らせします。

子どもが見つけてきた虫の名前を、図鑑で調べたりすると思いますが、「この木は何ていう名前だろう?」と木の名前を図鑑で調べたことはありませんか?

調べたことのある方は分かるはず!

 樹木を調べて→分かる!にたどり着くことの難しさ。

子どもの探求心のおもむくままに、木の名前を図鑑で調べても「全然わからなかった」という経験をしたことはありませんか?

 

未知なる奥深い自然の全てが図鑑等で調べて答えが見つかるものでもありませんが、せめて植栽されたものは答えを見つけたいですよね。

それが子どもの探求心がかかわっていればなおさら。

 

調べて分かる面白さが、次も調べてみようという探求心や好奇心へとつながり、「学びに向かう力」が育まれていくのだと思います。

調べても分からなかったでは、次の調べる気も減ってしまいますよね。

 

 

木の調べ方

樹木調べは、実はとても簡単。

「葉っぱのつき方」「葉っぱのまわりのギザギザ」「落葉樹か常緑樹か」という3つの特徴を調べたら、「林将之著:見る知る考えるずかん 五感で調べる木の葉っぱずかん」。

インターネットを使って千葉県立中央博物館:樹木検索図鑑にアクセスして調べることもできます。

 

調べて分かる面白さ。ぜひ体験してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

【参加者の感想】

・自然って面白いなと感じつつ、子ども時代に自然に触れた記憶を思い起こしながらから参加できました。楽しかったので、子どもたちへこの楽しさを伝えたいです。

・木々の名前、特徴、由来などをさらに知りたいと感じました。解像度をさらにあげたいと感じます。

・草の名前。くっつき虫の名前を調べていきたいと思いました。

・保育者が自然のことを知り、子どもに伝えていく。そのためには時間がかかるが、こういう機会(木のこと自然のことを知る)を定期的にもうけていった方がいいと思う。そこから子どもたちに伝えていけば、遊びの質も、自然に対しての向き合い方、かかわり方がかわっていくと思う。

・目に見えてわかる果実や木の実は知っていたが、ひっそりと生きている一つ一つの木々、花などをじっくりみていくと、知らなかった!ということがたくさんあった。

・時間を気にせず、ゆっくり園庭を歩きながら散策することに楽しさを感じました。自然のおもしろさを教えていただき、ありがとうございました。

・植物の一つひとつを細かいところまで観察してみようと思いました。

・気にせずに通り過ぎていた木々たちに、表情があったり、名前の由来があったり、それぞれ特徴があったりと、一つひとつの話しを聞き、触れる度に感動がありました。

・自分も自然は好きな方だと思っていましたが、より知識が広がったのと、自分では気づかなかったを知る機会になり、全体的にとても面白かったです。

・毎日過ごしている園庭の自然に、自分の知らなかった事、無関心だった部分、当たり前の風景になっていた部分が浮き彫りになり、園庭を自然環境を新たな目で見直すきっかけになりました。

・実際に自分の目で見たり触ったりなど体験しながらの散策は面白かったです。

・長い期間をかけて明徳の木々の観察をしてきたことがわかりました。植えてある木、一本一本子どもたちにわかるように名前の表示、QRコードを保護者が来園しても見て調べられること、ありがたいと思いました。

・自分自身が研修の中で何度もそうなんだ!と学びの中に気づきや知る喜びがあった様にこども達にもその様な経験が大切だと思いました。

・草木の名前、名前の由来が面白かった。説明を聞いた後に改めて草木をみて「なるほどー」と感動しました

・知識があったとしても、感動する気持ちや発見した時の喜びを感じる気持ち、共感する気持ちを忘れてはいけないという事を改めて感じました。

・保育者自身が自然に興味を持ったり、子どもからの自然への声掛け、つぶやきに耳をかたむけ日々の保育の中で声をひろいあげていく。

・子どもの目線、もしくは虫探しなどで思っていた以上に下ばかり見ていたと、園庭での説明を聞いて感じました。葉っぱだけでなく、木の幹を実際に触ったり擬音で表現する事を先ずは取り入れていけたらと思いました。

・知らない事を知れた事に面白さを感じた。難しい事は分からないので、子どもみたいに枝に顔があるなど目で見て分かる単純な物は、とても印象に残りました。

・季節ごとに自然体験、観察ができると面白いなと思いました

・知らなかったことを知ることができたところに面白さを感じました。

・香りについてのお話しの中で、子どもによって感じ方が違うため、保育者(大人)が決めつけた発言をしない方が良いと伺い、感銘を受けました。自然に限ったことではありませんが、保育者のふとした発言によって個々の感性に蓋をしてしまっていたかもしれないと痛感しました。それぞれの感じ方を大切にしていきたいと保育を振り返るきっかけになりました。

・幼稚園のプラタナス。「もみじばすずかけのき」という名前、葉が大きい、種がたくさんある、くらいしかプラタナスのことは知りませんでした。でも今回の説明で次出てくる芽を守っていることや種が多い理由など、プラタナス1つで知識が増えたことが嬉しかったです。

・まだまだ知らないことがあって知った時の感動があること。

・身近にある木々たちについて色々な発見があり、とても楽しかったし勉強になりました!保育の中でも子どもたちにもどんどん伝えて行きたいと思います。ありがとうございました!

 

 

 

 

 

*このページは自然観察指導員でもある”樹木さん”の責任編集です。